カルドア・ヒックス基準(かるどあひっくすきじゅん)

カルドア・ヒックス基準は、1939年にニコラス・カルドアとジョン・ヒックスによって提唱された経済効率性の判断基準です。この基準は、ある政策や変化によって利益を得る人々が、損失を被る人々に対して十分な補償を行うことができれば、その変化は社会全体にとって望ましいとする考え方です。現代の政策評価や経済分析において重要な理論的基盤となっています。

関連用語と表現

この基準の核心は「潜在的な補償可能性」にあります。実際に補償が行われるかどうかではなく、理論的に補償が可能かどうかを問題とします。つまり、政策変更によって生じる利益の総額が損失の総額を上回れば、その政策は効率的であると判断されます。 カルドア・ヒックス基準は、パレート最適の概念を拡張したものとして理解できます。パレート最適では誰も損をしない改善のみを認めますが、カルドア・ヒックス基準では損失者への補償が理論的に可能であれば改善と見なします。この特徴により、現実の政策評価において より実用的な判断基準として活用されています。 費用便益分析においては、この基準が中心的な役割を果たします。公共事業の評価や規制政策の検討において、社会全体の純便益がプラスになるかどうかを判定する際の理論的根拠となっています。

「カルドア・ヒックス基準」の具体例

例1: 高速道路建設プロジェクトにおいて、利用者の時間短縮効果や経済活動の活性化による便益が年間100億円、一方で立ち退きを余儀なくされる住民への損失が年間30億円の場合、差し引き70億円の純便益が生まれます。

【解説】住民への実際の補償額に関わらず、理論的には十分な補償が可能であり、社会全体としては効率的な投資と判断されます。

例2: 貿易自由化政策により、消費者は安価な輸入品で年間500億円の便益を得る一方、国内産業の従事者は年間200億円の損失を被る場合、差し引き300億円の社会的利益が発生します。

【解説】失業者への職業訓練や転職支援に十分な予算を充てることができれば、この政策は効率性の観点から望ましいと評価されます。

カルドア・ヒックス基準は現代の政策立案において不可欠な分析ツールとなっています。ただし、実際の補償が行われない場合の公平性の問題や、便益・費用の測定方法については継続的な議論が必要です。今後も社会的意思決定の重要な指針として活用されていくでしょう。

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