IoTシステムを安全に構築する方法 ― エッジコンピューティングとセキュリティ対策の活用
- IoTデバイスの数が急増し、それに伴ってセキュリティリスクも高まっている
- エッジコンピューティングにより、データ処理の分散とリアルタイム性が実現できる
- IoTシステムの構築では、セキュリティ対策とエッジコンピューティングの活用が不可欠
IoTの普及と課題 ― セキュリティリスクの高まり
IoT(Internet of Things)の普及が加速しています。家電製品から産業機器、自動車、ヘルスケア機器に至るまで、さまざまなモノがインターネットにつながり、データのやり取りが行われています。この「モノのインターネット化」が新しいビジネスチャンスを生み出す一方で、セキュリティリスクの高まりが深刻な課題となっています。
1-1. IoTデバイスの急増と脅威
IoTデバイスの世界の出荷台数は、2020年には308億台、2025年には約428億台に達すると予測されています(IDC, 2019年)。この膨大な数のデバイスがインターネットにつながることで、サイバー攻撃の標的が拡大しています。セキュリティホールを狙った不正アクセスや、マルウェアの感染、データの漏洩など、様々な脅威にさらされる可能性があります。
1-2. セキュリティ対策の重要性
IoTシステムを安全に運用するためには、デバイスからクラウドまで、システム全体のセキュリティ対策が不可欠です。特に、エッジデバイスのセキュリティ確保が重要視されています。エッジデバイスが乗っ取られれば、サイバー攻撃の踏み台となり、深刻な被害が及ぶ恐れがあるためです。
注目すべきポイント
- IoTデバイスの増加に伴い、サイバー攻撃のリスクが高まっている
- エッジデバイスのセキュリティ確保が最重要課題
- デバイスからクラウドまでシステム全体のセキュリティ対策が必要
エッジコンピューティングの活用
IoTシステムにおけるセキュリティリスクを低減し、リアルタイム性を確保するための有力な手段として、エッジコンピューティングに注目が集まっています。エッジコンピューティングとは、データ処理をクラウドだけでなく、エッジ(端末側)でも行う分散型コンピューティングのことです。
2-1. エッジコンピューティングとは?
従来のクラウドコンピューティングでは、IoTデバイスから収集したデータをクラウドに送信し、処理を行っていました。一方、エッジコンピューティングではデータ処理をエッジ側で行うため、クラウドへのデータ送信が不要になります。これにより、データ転送にかかる時間を大幅に短縮でき、リアルタイム性の高いシステムを実現できます。
2-2. 導入のメリットと課題
エッジコンピューティングを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- リアルタイム性の向上
- ネットワーク負荷の軽減
- データの機密性向上
一方で、課題もあります。エッジデバイスの計算リソースには限界があり、処理能力が制限されることです。また、エッジデバイスのセキュリティ確保が重要になります。
実践のヒント
エッジコンピューティングの導入を検討する際の懸念点は?
- エッジデバイスのセキュリティをどう確保するか
- エッジデバイスの処理能力が十分か
- エッジとクラウドの連携をどう設計するか
IoTシステムにおけるセキュリティ対策
IoTシステムでは、エッジデバイスからクラウドまで、システム全体のセキュリティを確保する必要があります。ハードウェアとソフトウェアの両面から、徹底した対策を講じましょう。
3-1. ハードウェアの安全性確保
IoTデバイスのハードウェアには、以下のようなセキュリティ対策が求められます。
- 物理的な保護(耐タンパー性)
- セキュアなプロセッサの採用
- 認証機能の実装
特に、産業用途や重要インフラなどの分野では、ハードウェアの信頼性が極めて重要です。
事例紹介: 産業用IoTゲートウェイの採用
工場の生産ラインでは、高い信頼性が求められるIoTゲートウェイを採用しています。このゲートウェイは、セキュアなプロセッサを搭載し、耐タンパー性にも優れています。また、デバイス認証機能が組み込まれており、不正なデバイスの接続を防ぎます。
3-2. ソフトウェアの脆弱性対策
ソフトウェアのセキュリティ対策では、以下の点に留意する必要があります。
- OSやミドルウェアの定期的な更新
- 暗号化の適切な実装
- セキュリティパッチの適用
特に、エッジデバイスで動作するソフトウェアには、リソース制約があることが多いため、軽量で安全な設計が求められます。
注目データ
– IoTデバイスを狙ったサイバー攻撃は年々増加しており、2021年は38%増加した(SonicWall)
– 2022年に発見されたIoT機器の脆弱性は869件に上る(ICS-CERT)
– IoTデバイスの40%以上が、デフォルトのパスワードを使用している(Palo Alto Networks)
参考文献・引用元
- Worldwide Internet of Things Forecast Update, 2019–2023 IDC 2019
- 2022 SonicWall Cyber Threat Mindset Survey SonicWall 2022
- ICS-CERT Annual Vulnerability Statistics Report Cybersecurity and Infrastructure Security Agency 2023
- IoT Threat Report Palo Alto Networks 2022